編集で大事にしていること
友澤さん:やっぱり読者の目線が一番大事ですね。読む人の気持ちになって「どうすれば引きつけられるか」「どんな見出しや構成だったら読みたくなるか」というところに気を配っています。
石井さん:僕も読者視点はとても大切にしているのですが、読者視点というものはとても抽象的でもありますよね。読者視点になっているつもりで、読者視点になれていなかったり。だから最近思うのは「自分が面白いと思うか」で判断するのも良いんじゃないかと。
友澤さん:それ、本当に大事!自分自身が第一読者だから。
石井さん:そうですよね。単純に人として読んでいて楽しければ、という方が大事なんだろうなと思います。
土屋さん:私も自分が読まないだろう本は作れないなと思います。先日、営業の本を作ろうとしましたが、「全然営業の気持ち分からない」と思って(笑)。ヒアリングしても無理だなと思ったので企画を完全に変えました(笑)。
石井さん:それで「気持ちよく人を動かす」という本が出来上がったのですね。
土屋さん:そうなんです。自分がわくわくしないものって魂がこめられないですよね。
宮藤さん: 僕は編集には「書き換え」も大事だと思います。もちろん著者を尊重するのは大前提ですが、著者にいただいた素材をそのまま残すだけでなく、自分なりに「読みやすいな」と思うものはきちんと提案するようにしています。
土屋さん:なるほど。著者とは呼吸を合わせることが大事ですよね。
石井さん:著者さんの意見をできるだけ尊重しながら事前準備もしっかりすると、自分が想定しているものがしっかりできあがることもあります。そういうコントロールがもっと上手くなりたいです。
友澤さん:あとは明らかに直さなくてはいけないこともあります。例えば昔の人だと差別的なことを書く人がいるんですよね。いま、コンプライアンスの問題で、昔はありだったけど、今はだめとかよくありますよね。
土屋さん:それはすごく悩みますね。起業家の本をつくると過激なことをいう方もいらっしゃったり。面白いことをおっしゃってるのですが、一般人だと常識外れなことだったり。「この人なら大丈夫かな?」とか色々考えます(笑)。
友澤さん:文章の好みは著者に合わせるのが良いと思いますが、編集者としては常に客観性をもっていたいですよね。提案して「さすがですね」と言われると嬉しいです(笑)。
土屋さん:この前あったのは、「人は寝なくても死なないから働け」というのが原稿にあって(笑)。これは少しまずいかなとちょっと思いましたね。消すべきなのかなと。
友澤さん:今は電子ブックなどでも炎上しますし、コンプライアンスの問題は慎重になった方がいいですよね。
土屋さん:編集のとらえ方ってそれぞれだと思いますが、私は「著者が言いたいことをわかりやすく読者に翻訳する仕事」だとも感じます。
友澤さん:著者の良さを引き出すことはとても大事ですね。私は著者が過去に本を出したことがある方であれば、その方の過去の本を絶対に超えたいという思いで編集します。
石井さん:過去の著書をチェックされているんですね。
友澤さん:はい、必ず見るようにしています。大体の原稿や著書をみて、それを凌駕するものをつくろうと思っています。
石井さん:その方らしい文体などは配慮したりしますか?
友澤さん:執筆していただくときはその人の語り口などを確認しますし、インタビューでもその人らしさを大事にします。でも本としての書き言葉もあるのでそのバランスも考えるようにしています。
石井さん:友澤さん流の見出しの付け方のテクニックを知りたいです。
友澤さん:週刊誌に勤めていたことがあるのですが、やっぱり週刊誌って見出しがすべてなんですよね。見出しで売れたり売れなかったりするくらい重要なんです。だから今でも見出しを注意してチェックしていますね。「うまいなあ、この見出し」と思えば、参考程度にとりいれてみたり。
石井さん:うまい見出しってどういう見出しですか?
友澤さん:驚きがある見出しですね。当たり前のことを当たり前にいわないようにネタの一番新鮮なところを切り取っています。
石井さん:よく「○○の仕方」のようなタイトルをつけがちですが、そういうものではなく、ということですよね。
友澤さん:本にもよりますが、読者は本を読むとき、特にビジネス書は目的があって何か得ようとして読んでいますよね。なので、何が得られるのかわかるようにする。「三つの○○」など、数字を入れたり、あとは「何人中何割の人が○○」など。「半分の人が貯金がありません」などと言われるとちょっとドキッとしますよね。単に「お金を貯めましょう」などと書かれているよりも、そういうちょっと驚くような面白そうなところを引っ張る。著者は割と論文のように正確に無難にしたがるところがありますが、やっぱりどの章を読んでも読みたくなるようにしていると立ち読みをしたあとに買ってくれますよね。